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2021年10月第2週朝活論文紹介

当研究室では毎週月〜木曜日の朝9:00-10:00は,研究室のメンバーで集まって英語の論文を読んで紹介するというイベントを行っています.

今週の朝活では,下記論文を紹介しました.

  • SpeedReader: Reader Mode Made Fast and Private (WWW 2019)
  • FactCatch: Incremental Pay-as-You-Go Fact Checking with Minimal User Effort (SIGIR 2020)
  • AL: An Adaptive Learning Support System for Argumentation Skills (CHI 2020)
  • Bias in Word Embeddings (FAT 2020)

SpeedReader: Reader Mode Made Fast and Private (WWW 2019)

書誌情報

Mohammad Ghasemisharif, Peter Snyder, Andrius Aucinas, Benjamin Livshits: SpeedReader: Reader Mode Made Fast and Private. WWW 2019, 12 pages, 2019.

140 字概要

余分なコンテンツを削ぎ落とすリーダーモードを備える SpeedReader を提案。近年ウェブページは複雑化している。リーダーモードを適用できるか判断する分類機を提案、既存の DOM ツリー再構築機と組み合わせた。分類器は対抗手法より精度が高く、リーダモードは読み込み時間や広告を大きく削減し、プライバシーを向上させた。

まとめスライド

SpeedReader_ Reader Mode Made Fast and Private.png (149.4 kB)

感想
  • ウェブページの中でも,ニュースサイトは特にサードパーティーによるトラッキングが多く行われているという研究も存在する.性能評価では,ニュースサイトでは他の種類のウェブページと比較して SpeedReader によって最適化できるページが多い傾向にあった.コンテンツブロッカーとしてのリーダーモードはうまく噛み合っていると感じた.
  • Reader mode を DOM 再構築のリソース削減に活用する面白い研究であった.広告やトラッカーをそもそも読み込まないため,既存の手法と比較して表示速度が極めて速くなっていた.しかし,対応している web ページは全体の 22%少ないため,如何にしてより多くのページにも適用可能にするかが今後の課題と言える.
  • 既存のアドブロックよりも、読み込むリソースそのものが削減されるという点において非常に優れている。近年のウェブの複雑化は、それを揶揄するサイトの出現が話題にもなったように、広告などの存在が大きく影響している。今後、この仕組みを搭載したブラウザーが登場し、デファクトスタンダードになっていくと思われるし、そうなってほしい。
  • この研究のパフォーマンス的側面、コンテンツブロッカー的側面の両側からのアプローチが面白く、特にコンテンツブロッカーとしての側面が現在のブラウザ使用上での問題を解決してくれそうだと、一人のユーザとして思った.論文中にもあった通り、ユーザ側の使用感を確かめる検証を行っていなかったためそちらも気になるところである.

AL: An Adaptive Learning Support System for Argumentation Skills (CHI 2020)

書誌情報

Thiemo Wambsganss, Christina Niklaus, Matthias Cetto, Matthias Söllner, Siegfried Handschuh, and Jan Marco Leimeister. 2020. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI 2020). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 1–14.

140 字概要

本稿は,学生が文章を書く過程で,論証構造や文章の質のフィードバックを受けることができるツールを提案した.提案ツールの有用性を測る実験の結果,既存手法に比べて,文章内の論証の量が増加し,議論の質が高くなった.

まとめスライド

AL_ An Adaptive Learning Support System for Argumentation Skills.png (185.7 kB)

感想
  • このような入力するたびに自分の文章の質を評価してフィードバックしてくれることで文章を修正していけるなら、SNS などに搭載すると炎上や差別的な発言が減るのではないかと思った.
  • 論文の執筆者は、今回のツールを開発するにあたって「Adaptive (適応性)」を導入することにこだわっていると感じた.執筆者によると今まで、議論をサポートするようなツールは開発されてきたが、このようなツールに「Adaptive (適応性)」を盛り込んだのは初だと説明していた.そして従来のやり方より、「Adaptive (適応性)」のあるフィードバックを生徒に与えた方が、より説得力のある文章を書くことができると結論付けていた.しかし「Adaptive (適応性)」とは具体的に何なのだろうか.理解することができなかったのが残念だ.
  • 教育工学の観点から理論を固め,ユーザへのインタビューによるボトムアップ・トップダウンの開発アプローチをとり,提案ツールを構築している.また,データセットも著者らが自力で集めるところから始めており,研究への労力のかけ具合が伝わる.自分にとって,模範となるような論文である.
  • このツールを使うことで説得力のある文章を書くことが出来るようになるが,このツールを使用したユーザが,ツールを使わずに説得力のある文章を書く能力が向上するのかが気になった.

FactCatch: Incremental Pay-as-You-Go Fact Checking with Minimal User Effort (SIGIR 2020)

書誌情報

Thanh Tam Nguyen, Matthias Weidlich, Hongzhi Yin, Bolong Zheng, Quang Huy Nguyen, Quoc Viet Hung Nguyen, FactCatch: Incremental Pay-as-You-Go Fact Checking with Minimal User Effort. SIGIR 2020: Proceedings of the 43rd International ACM SIGIR Conference on Research and Development in Information RetrievalJuly 2020 Pages 2165–2168

140 字概要

ファクトチェックの新手法の提案.システムが抽出した信憑性を判断すべき主張をユーザがダッシュボードから判断してシステムに返し,システムがダッシュボードの表示を更新する.ダッシュボードにはサイトの評価,主張の信用度などがまとまっており,透明性の向上かつ人間の投資労力を最小限に抑えることを可能にする.

まとめスライド

スクリーンショット 2021-10-14 11.03.51.png (1.3 MB)

感想
  • 3/4 の嘘情報があるウェブの世界で,他ユーザーの意見を加味してファクトチェックを行うことは,同調による評価がされた場合,”公認の嘘”が生まれるかもしれないと思った.
  • 最近ではファクトチェックに限らず,車の運転など人間と機械が共同で何かを行う場面がある.その中でどこまで機械にやってもらうかという機械と人間の役割の範囲を決めるのはすごく難しいと思った.また,協調作業する上で,機械と人間のやりとりをどう行うのか(可視化方法)や機械がなぜその結果を出したのか(アルゴリズムの中身を知る)ことが大切になると考えられる.
  • 全自動ファクトチェックではなく,主張をクロールしてきてユーザに信憑性を判断してもらうことで,今まで不透明だったであろうファクトチェック作業者のパターンが明らかになること,それによるファクトチェック作業の省力化と加速が見込める.一方で,システムが構築する“事実”は自ずと作業者の考えにフィットしていった結果になると思われるので「ダッシュボード」の存在によって公平性がどのくらい担保できるのかが知りたいと思った.

Bias in Word Embeddings (FAT 2020)

書誌情報

Orestis Papakyriakopoulos, Simon Hegelich, Juan Carlos Medina Serrano, Fabienne Marco: Bias in Word Embeddings. FAT* 2020: Proceedings of the 2020 Conference on Fairness, Accountability, and Transparency, pp.446-457, 2020.

140 字概要

本研究では,Word2Vec などに用いられる単語埋め込みにデータセットの偏見が影響を及ぼしていることを明らかにする. Facebook のテキストデータをラベリングし,極性辞書によって単語が肯定的に用いられているかを評価することで,人種や性別に対するステレオタイプな印象があることを示す.また偏見の傾向は元となるデータセットにも依存し,提案手法によって傾向に依らずそうした偏りを緩和できる可能性も示した.

まとめスライド

Bias in Word Embeddings.jpg (98.5 kB)

感想
  • 提案手法によって,人々が無意識のうちに持つ偏見を明らかにすることができると思った.これから生まれる新しい種類の偏見に対応できたり,SNS に投稿する際に偏見を気づかせることができたりなどの応用ができそう.
  • 定量的に偏見の存在を指摘する研究自体の存在を初めて知り,画期的だと感じた.ステレオタイプな印象が実際にデータ分析にどのように反映されるかは定かではないが,知見を深めていくこと自体は非常に有効だと思った.
  • バイアスのかかったデータを用いて偏見やステレオタイプを予測することを立証できたのは,見えない偏見に気づくために重要だと感じた.
  • 文章の中に存在するバイアスを検出できるのは興味深いと思った.バイアスが存在する文章はどのような書かれ方をされているのか,どのような媒体で書かれているのかなどが検出できればさらに面白いと思う.