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2021年10月第3週朝活論文紹介

当研究室では毎週月〜木曜日の朝9:00-10:00は,研究室のメンバーで集まって英語の論文を読んで紹介するというイベントを行っています.

今週の朝活では,下記論文を紹介しました.

  • ‘It’s Reducing a Human Being to a Percentage’; Perceptions of Justice in Algorithmic Decisions (from CHI 2018)
  • Data-centric disambiguation for data transformation with programming-by-example (from IUI 2021)
  • Why the World Reads Wikipedia: Beyond English Speakers (from WSDM 2019)
  • SymbolFinder: Brainstorming Diverse Symbols Using Local Semantic Networks (from UIST 2021)

‘It’s Reducing a Human Being to a Percentage’; Perceptions of Justice in Algorithmic Decisions (from CHI 2018)

書誌情報

Binns, R., Van Kleek, M., Veale, M., Lyngs, U., Zhao, J. and Shadbolt, N., 2018, April. ‘It’s Reducing a Human Being to a Percentage’ Perceptions of Justice in Algorithmic Decisions. In Proceedings of the 2018 Chi conference on human factors in computing systems (pp. 1-14).

140字概要

アルゴリズムによる意思決定における正義感について,ユーザがどのように認知するのかを,異なるシナリオや説明スタイルにて調査を行った.調査結果より,人々が意思決定において正義の側面を重視していることが分かった.また結果から,説明の導入タイミングや方法が,意思決定の公正さを評価する際に重要となることが示唆された.

まとめスライド(1枚のpngファイル)

‘It’s Reducing a Human Being to a Percentage’; Perceptions of Justice in Algorithmic Decisions.png (163.7 kB)

感想
  • シナリオに応じて,有効性のある説明スタイルとそうでないものがあったように,説明スタイルの有効性は,ユーザの性格など他の要素にも依存しそうである.実用的なシステムにするためには,ほかの要素についても検討する必要がありそうだと感じた.
  • 複数のシナリオで実験が行われており,そのデザインの観点で,読んでいて学びになる論文であった.公正さはあらゆる意思決定において重要だと思うが,他にも意思決定に有用な観点はあると思う.将来的に,別観点での調査も必要そうだと感じた.
  • アルゴリズムによる意思決定の説明手法が一般人にも適用可能か調査した研究だった.既存の説明手法の有用性を測る興味深い研究であった.しかし,今回の調査では,あくまで仮想のシナリオについて評価するものだった.自分の問題ではないため,被験者は意思決定に対して十分に批判的であったか定かではない.実際に口座を凍結されたり,保険の加入を拒否された人に対して,説明手法が寄与するか調査できると良いかもしれない.

Data-centric disambiguation for data transformation with programming-by-example (from IUI 2021)

書誌情報

Minori Narita, Nolwen Maudet, Yi Lu, Takeo Igarashi: Data-centric disambiguation for data transformation with programing-by-example ,IUI 2021: Proceedings of the 26th International Conference on Intelligent User Interfaces ,10 pages ,2021.

140字概要

非プログラマでもデータの変換が正確かつ容易に行うことができる対話型インタフェースを提案した.出力の具体例を入力することで,変換候補が複数存在する場合に変換方法を選択できるよう設計された.提案インタフェースを使用したユーザは所要時間・エラー率をともに低下させることができた.

まとめスライド

Data-centric disambiguation for data transformation with programming-by-example.png (135.3 kB)

感想
  • データの前処理は精度を高める上で重要だが,プログラマーでない人はその段階で躓いてしまう.直感的に分かりやすい出力を修正することは,完全に正しいプログラムではなくとも,データ変換後の結果が同じになれば目的が達成されるという考え方に基づく.この考え方が,プログラマーでない人に向けたアプローチとしてうまく噛み合っていると思った.
  • データの整形には時間と労力がかかる.データ分析や機械学習といった分野ではデータの質の高さが重要であり課題でもあったが,このインタフェースを用いることでよりデータの質の担保にかかるコストを下げることができると考えた.あらゆるデータに対して対応するのは難しいが,発展としてデータの特徴ごとに特有の変換が存在するのかを調査することも考えられる.
  • なぜ今までプログラミングができない人向けのツールが開発されてこなかっただろうか.Feature engineeringとは、機械学習のシステムを構築する際、入力に使うデータを設計する技術だが、ドメインの知識(解析しようとする分野に関する知見・トレンド情報など)を必要とする.ここからは私の考察だが、特定の分野の専門家は必ずしもプログラミングができるわけではないが、機械学習を取り入れる企業が増えてきたため、データの成形を頼まれることがあるのではないか.つまり今まではデータを設計するのは、情報学に精通している人が行っていた.しかしこれからは、他の分野の専門家でも行う必要があるというトレンドの中にいるのではないか.
  • 非プログラマ向けという視点でデータ変換ツールを開発するというのがまず素敵な着眼点だが、設計が徹底的に非プログラマ向けでできた研究だなと感じた。いままではRのようにわかりやすいコードでプログラムさせるという解決手法しか知らなかったので、このような対話型手法の台頭で今後どんな研究者でも好きなようにデータを成形、変換できるのも楽しみである。

Why the World Reads Wikipedia: Beyond English Speakers (from WSDM 2019)

書誌情報

Florian Lemmerich, Diego Sáez-Trumper, Robert West, Leila Zia: Why the World Reads Wikipedia: Beyond English Speakers. The Twelfth ACM International Conference on Web Search and Data Mining (WSDM 2019), pp.618-626, February 11–15, 2019.

140字概要

ウィキペディアの文化背景ごとの読者層を理解するために,様々な言語での大規模調査を実施.従来研究が概ね英語版を基準に様々な結論を出していたが,ウィキペディアの利用は英語ばかりではない.調査の結果,言語によってウィキペディアの利用傾向は異なり,英語版を元にした研究結果を全ての言語に適用できるわけではないことがわかった.また国の教育や経済水準が閲覧傾向と関係することが明らかになった.

まとめスライド(1枚のpngファイル)

スクリーンショット 2021-10-21 9.26.37.png (1.1 MB)

感想
  • 国や地域ごとに利用傾向が大きく異なることに驚いたが、これをHDIや人口あたりGDPという数字で捉えることで、全体の傾向をうまくつかめている。HDIが低い国のほうがWikipediaを熟読し、科学技術などの情報を求めていたことについては、おそらく周囲に情報が少ないからではないかと予想している。開発度の低い地域では、本やメディアなどの情報源が概ね不足する傾向にあると考えられるからである。
  • 国の状況によって閲覧方法の傾向が異なることは興味深いと感じた.日本における主に趣味のための活用やWikipediaを参考にしてレポートなどを作成しないという価値観は必ずしも世界的な傾向ではないのだと感じた.
  • 今回のWikipediaのような何かのシステムを改善する上で,ユーザがどのような振る舞いをするかを考慮することは重要であると考える.ユーザの振る舞いを考慮する際に文化的背景や国の教育が関連しているのは今回の結果から明らかになったので,今後も利用していくとよいと思った.特に言語を扱う研究では利用すべきだと考えられる.

SymbolFinder: Brainstorming Diverse Symbols Using Local Semantic Networks (from UIST 2021)

書誌情報

Savvas Petridis, Hijung Valentina Shin, Lydia B Chilton: UIST 2021: The 34th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology October 2021 Pages 385–399

140字概要

デザイナーが抽象度の高い概念でも多角的に解釈できるよう,関連単語/画像を提示することで概念のシンボル発見を支援するシステムの提案を行った.提案システムを使ってユーザにシンボル発見のタスクを行ってもらったところ,ユーザは労力をかけず,多くのシンボルを発見することが可能になった.

まとめスライド(1枚のpngファイル)

SymbolFinder_ Brainstorming Diverse Symbols Using Local Semantic Networks.png (204.5 kB)

感想
  • 多様かつシンプルで具体的なシンボルを提示するというコンセプトは,デザイナーだけではなく多くの人にとって使い勝手が良いと感じた.
  • デザイナーの,どんな経験・発想のきっかけから作品が生まれたかという制作背景が好きな鑑賞者にとっては興ざめに感じると思うが,効率面で見ればかなり意義のあるシステムだと感じた.
  • 複数の側面から関連するシンボルを探すことができるようになることは,口頭による抽象的な概念の説明の場面においても複数の側面から考えることが容易になり,伝えやすくなるのではないかと感じた.
  • ブレインストーミングをする時に狭い観点に縛られてしまうことはよくあるので、多様な観点を持つための支援は重要だと感じた。