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2021年6月第4週朝活論文紹介

当研究室では毎週月〜木曜日の朝9:00-10:00は,研究室のメンバーで集まって英語の論文を読んで紹介するというイベントを行っています.

今週の朝活では,HT2014,CHI2021から下記論文を紹介しました.

  • Understanding and controlling the filter bubble through interactive visualization: A user study (from HT 2014)
  • Mindless Atractor: A False-Positive Resistant Intervention for Drawing Atention Using Auditory Perturbation (from CHI2021)
  • Sticky Goals:Understanding Goal Commitments for Behavioral Changes in the Wild (from CHI 2021)

Understanding and controlling the filter bubble through interactive visualization: A user study (from HT 2014)

書誌情報

Sayooran Nagulendra and Julita Vassileva. 2014. Understanding and controlling the filter bubble through interactive visualization: a user study. In Proceedings of the 25th ACM conference on Hypertext and social media (HT ‘14). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, pp.107–115.

140字概要

フィルターバブルを可視化させるMADMICAというツールを用い,ユーザに,その設定を操作させることでフィルターバブルへの理解を深めさせた.実験協力者にMADMICAを使用してもらい,定性的,定量的な観点からフィルターバブルへの理解を評価した.結果,実験協力者のフィルターバブルに対する意識が高まった.

フィルターバブル:アルゴリズムによって検索サイトやSNSでユーザの好みに合った情報ばかりが表示され,多様な情報(自身と異なる意見など)を見なくなってしまう現象

まとめスライド

Understanding and controlling the filter bubble through interactive visualization_ A user study.png (186.4 kB)

感想
  • フィルターバブルを可視化するアプローチとしては直球でわかりやすいデザインだと感じたが,それでもユーザの理解には課題が多く表現の難しさを感じた.
  • ユーザがフィルターバブルについて理解することによって,実際のSNSに対する行動がどのようになるか調べたら面白いと思った.
  • 実験では,ユーザがフィルターバブルについて理解することができていたが,実際に日常でtwitterやニュースをみる時に,フィルタリングされていることを意識し,触れる情報を意識的に変更することにつながるのだろうか.
  • 実際にFacebookやTwitterなどを利用している際に,フィルターバブルをちゃんと意識して行動させるためには,やはりシステム内にChrome拡張のような形で介入する必要がありそうだと感じた.

Mindless Attractor: A False-Positive Resistant Intervention for Drawing Attention Using Auditory Perturbation (from CHI2021)

書誌情報

Riku Arakawa, Hiromu Yakura: Mindless Attractor: A False-Positive Resistant Intervention for Drawing Attention Using Auditory Perturbation. Proceedings of the 2021 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI2021) , Pages 1–15, May 2021.

140字概要

ビデオを視聴する際の集中力を高めるためのシステムMindless Attractorを提案した.Mindless Attractorは,従来の明示的な警告ではなく,ビデオ音声を絶妙に変化させ無意識的に注意を戻す.評価実験の結果,集中力を高める十分な効果があり,ユーザに好意的であった.

まとめスライド

image.png (172.7 kB)

感想
  • ユーザの無意識に働きかけることにより,ユーザのモチベーションの有無にあまり影響を受けずに集中を持続させていた.ユーザの行動変容を行う際,ユーザ自身のモチベーションが低い場合にどのようなアプローチを取るかが考えどころになる.今回のアプローチは声の調子を変えるという人間のコミュニケーションの本質に基づいており,ユーザのモチベ―ジョンに依存しないアプローチのお手本の一つなのではないかと考えた.
  • システムの構成には特に高価な機器は不要であり、すぐにでもソフトウェアとしてリリースできるように思われる。研究の背景にもある通りコロナ渦でこのようなシステムの需要は大きく、製品化が待ち遠しい。また、研究ではzoomみたいなものが想定されていると思うが、対面講義、小中学校の授業でも応用ができると考えられる。例えば、生徒の集中力がある程度下がってきた時に、教師が話し方を変えたりすることができるだろう。
  • 集中してないから集中しなさいという明示的な警告ではなく,気になって見てしまうような介入方法は,社会実装する際にはとても重要である.善意の警告によってユーザ体験を損い,ユーザを失うことになりかねないため.
  • ユーザの行動変容を促す研究では,本来の目的に促すこととユーザが好意的に使えることはトレードオフの関係にあることが多いように思う.しかし,今回の研究のように無意識にアプローチすることは,それを解決する重要な視点であると思った.お母さんに似た声の人がいるとハッとしたことがあることから,集中を促すために音声を変化させることは,経験的にも理解できる方法だと感じた.人間の行動そのものだけではなく,行動を引き起こす認知的な部分をしっかり捉えることで,効果的な行動変容システムが作れると考えられる.

Sticky Goals: Understanding Goal Commitments for Behavioral Changes in the Wild (from CHI 2021)

書誌情報

Hyunsoo Lee, Auk Kim, Hwajung Hong, and Uichin Lee. 2021. Sticky Goals:Understanding Goal Commitments for Behavioral Changes in the Wild.In CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI 2021), May 8–13, 2021, Yokohama, Japan. ACM, New York, NY, USA, 16 pages. https://doi.org/10.1145/3411764.3445295

140字概要

自ら制限を設定することが目的達成にどのように影響するかを調査した.srickKというサービスにおいて,チャリティなどへの寄付といった金銭的な制限と,知人に監視してもらう社会的な制限の両方を設定してるデータを分析した.金銭的な制限社会的な制限ともに目的達成率に正の相関があった.

まとめスライド

Sticky Goals_ Understanding Goal Commitments for Behavioral Changes in the Wild.png (164.2 kB)

感想
  • 実生活での損失や利益が絡んでくると,目標達成の強制力が働きやすくなる.健康などの,どうしても達成したい目標がある場合には有効だと思う.一方,学習関連など自発的に行うタイプの目標に対しては,罰則を用いたアプローチでそもそも目標設定されない可能性があるのではないか.
  • Loss aversion is an important theory that can be applied to many fields, and it is effective to help people overcome “present bias”.
  • ネガティブな印象が強く、強制してまで達成したい目標がある一部の人しかユーザーとしてなり得ないと思った。どうしても達成したい目標まで優先度を上げられる仕組みが多くの人にとって最も必要な部分だと考える。
  • 目的達成のためのアプローチとしては有効であるかもしれないが,金銭的なペナルティが課されるため,全ての人が使える,あるいは使いたいと思うようなアプリケーションに用いるには向かないアプローチだと思った.
  • 本研究では自ら制限を課すことが,目的達成に与える影響を分析している.しかし.分析対象としたデータには大きな偏りがあると考える.金銭的な制限と社会的な制限の両方を設定しているデータのみが対象となっている.制限を課すことができる時点で,「ユーザが実現可能な目標を立てることができている」「自ら制限を課すことができるほど目標達成の意欲が高い」などの条件が前提となっていると考える.支援が必要なのは「実現可能な目標を立てることができない」ユーザや,「目標達成の意欲が低い」ユーザなのではないだろうか.そのような支援への取り組みが期待される.