当研究室では毎週月〜木曜日の朝9:00-10:00は,研究室のメンバーで集まって英語の論文を読んで紹介するというイベントを行っています.
今週の朝活では,下記論文を紹介しました.
- Let’s play together: Adaption Guidlines of Board Games for Players with Visual Impariement (from CHI 2019)
- Are You Influenced by Others When Rating? Improve Rating Prediction by Conformity Modeling (from RecSys 2016)
- To Risk or Not to Risk?: Improving Financial Risk Taking of Older Adults by Online Social Information (from CSCW 2015)
Let’s play together:Adaption Guidlines of Board Games for Players with Visual Impariement
書誌情報
da Rocha Tomé Filho, F., Mirza-Babaei, P., Kapralos, B. and Moreira Mendonça Junior, G., 2019, May. Let’s Play Together: Adaptation Guidelines of Board Games for Players with Visual Impairment. In Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-15).
140字概要
視覚障害者がボードゲームを自律的にプレイできるようにするためのアクセシビリティガイドラインを作成した.既存のゲームのアクセシビリティを向上させ,フィードバックを得た.自律的にプレイするためには,依然としてルールの確認が難しいという指摘があった.得られた全体的な知見をもとにガイドラインを作成した.
まとめスライド
感想
- 多様性に対する取り組みという点で,現実問題に則して分析的に分類するという試みは意義があると感じた.
- ボードゲームのみならず,アクセシビリティの意識が足りていないものはまだまだあると感じた.Webフロントエンド技術においては,アクセシビリティ向上に積極的な企業が増えている.このような活動が自然に増えるような仕組みが欲しい.
- 今回は,カードのデザインを変更し,障害者の方が自律的にプレイできるようなものを提案しているが,ゲームのプレイ方法や進行のデザインを修正することでアクセシビリティを向上させることができるとよいと感じた.
- デジタルゲームだけではなく,ボードゲームにアクセシビリティの問題があることを意識することになるという点では意義があると思う.障害者の方への配慮を行う上で大事なのは,介助されているという意識を持たせずに,楽しむことができるような仕組みを作ることだと感じた.
Are You Influenced by Others When Rating? Improve Rating Prediction by Conformity Modeling (from RecSys 2016)
書誌情報
Yiming Liu Xuezhi Cao Yong Yu: Are You Influenced by Others When Rating? Improve Rating Prediction by Conformity Modeling. RecSys ‘16: Proceedings of the 10th ACM Conference on Recommender Systems September 2016 Pages 269–272.
140字概要
オンラインレビューサイトにおいて,評価値がユーザのレビュー行動に与える影響をモデル化し,レビューを予測するモデルを考案した.レビューデータのみから学習させたモデル等と比較して,予測精度は高かった.同調圧力を高める要因として,レビューの数や,評価の偏り具合があることがわかった.
まとめスライド
感想
- We need to take both relative value and absolute value into account, and always analyze things depending on context.
- これまで見たレビューの中には、自分にとっては★3の内容でも★5がつけられていることもあった。 評価をする際、自分の中での絶対的な評価よりも、経験に基づいた相対的な評価をすると思う。そのため、自分が下した評価の立ち位置を決めるためにも、周囲の意見に流されてしまう傾向があるのではないか。
- レビューを評価者の立場で見るか、閲覧者の立場で見るかでも、自身の中での評価値や予測モデルに変化がありそうだと考えた。
- 個人的に何かを購買する際や利用する際には他のレビューを見るが,自分がレビューをする際に他人のレビューを見ることに驚いた.どういった点でそのような評価にしたのか記載されているレビューを見ることで,他人に流されたレビューかどうかを多少は識別できると思うが,同調圧力がはたらいたレビューを取り除くことができればよいと思った.
- 匿名であるにも関わらず他のレビューの内容の影響を受けてしまうのは意外だった.今後は影響を受けやすいレビュー対象や文脈などが明らかになると良いと考えた.
To Risk or Not to Risk?: Improving Financial Risk Taking of Older Adults by Online Social Information (CSCW 2015)
書誌情報
Jason Chen Zhao, Wai-Tat Fu, Hanzhe Zhang, Shengdong Zhao, Henry Been-Lirn Duh, To Risk or Not to Risk?: Improving Financial Risk Taking of Older Adults by Online Social Information, CSCW’15, pp95-104, 2015 March.
140字概要
本研究は,金融取引というリスクがある意思決定において,多数派の情報と,少数の個人の詳細な情報がどう影響するかを調査したものである.今回は間違った選択をしやすい高齢者を対象に実験を行なった.実験の結果,少数個人の詳細な情報よりも,多数派の情報に頼ることが多いことが明らかになった.
まとめスライド
感想
- リスク回避能力が高いほど,多数派の意見に強く影響されることが分かった.直感的に考えると,多数派に流されてしまうよりは,自分自身の考えで判断した方がより良い選択ができそうなため,この研究の結果は意外であった.
- この研究では仮想的な通貨を用いたが、多数派の情報を拠り所にするという考え方は現実の投資にも十分に活用できそうに感じる。現実の投資こそ、最もリスク中立的な思考が重視される場所である。
- 近年は行動経済学でも個人の意思決定は必ずしも合理的ではないという前提で考えるようになっているので,このように実際はリスクをどう判断しているのかを調査する研究は重要だと感じた.
- 人がリスクを判断する思考について,パターンが2つあるように思う.1つは,どちらかというと過去の経験から考える,感覚的に考える,多数の周りに合わせるパターンで,もう1つは,未来に向けて考える,合理的に考える,少数の数字や根拠に合わせるパターンである.今回の論文を読んで,どちらがリスクをより回避できるかというのは場面とリスクの種類に依りようだと感じた.